ライブで打ち込み音源や歌のハモリ音源を同時に流す、同期音源を使う方法
目次 -Contents-
~同期音源とは~
あらかじめ録音しておいた音源をバンドの演奏と一緒に流す事を「同期」と言います。
例えば「ドラム、ベース、ギターボーカル、の3人編成バンドだけどキーボードパートが欲しい…」等の場合に使います。
最近はアマチュアバンドでも同期音源の需要が高まっているのでこの記事では図を使ってどうやって同期をライブで使うのかを解説します。
はじめに…
同期音源をライブで使用する際は必ず事前にライブハウスにその旨を伝えておきましょう。
当日サウンドチェックの段階になっていきなり「同期使います」と言うと向こうは準備していないので心証が宜しくないはずです。
最悪タイムテーブルに影響が出る可能性があるので危険です。
大抵はセッティング図を本番数日前までに提出するよう求められるので、そこに記載しておけば大丈夫です。
何かケーブル類を借りたい場合はそれについても記載しておきましょう。
たまにライブハウスの人がセッティング図をあんまり良く見ておらず「えぇぇ~そうなの~?」みたいになりますが、こちらに非はないので「ちゃんと書いておきましたよ~」と返せます。
同期音源とバンドが……あんまりズレない理由
「キーボードとかだけを収録した音源を一緒に流すのはわかったけど、それバンドで合わせてズレないの?」というのが自然な疑問だと思います。
それはドラムにだけ、イヤホンからクリックというリズムが流れるようになっているからです。
クリックの音色は同期音源を作る際に自由に決められますが、メトロノームがずっと鳴っている状態です。
同期音源はクリックに合わせたリズム以外の音は出ないので、クリックのリズムにドラムが合わせて叩く→他のメンバーはドラムにかっちり合わせる、という連携によって同期とバンドがズレないわけです!
…はい。すいません、なるべくわかりやすく書いたので省きましたが厳密にはズレてます。
ドラムの耳に入った音に合わせて叩いたリズムにさらに他のプレイヤーが合わせるとなると、脳の仕様上ごく僅かですがプレイヤー達の音が遅れます。
ドラマーがクリックに前乗り気味で叩くか、同期音源とクリックのタイムを僅かにズラすかすれば合うと思います。
ズレているといってもごくごく僅かなので気にならなければ無視していいと思います。補足おわり。
ドラム次第
曲の道しるべたるクリックがドラムにしか聴こえていない以上、同期音源はドラムがクリックに合わせてちゃんと叩けなければ成立しないシステムなのです。
ドラムがクリックを無視して速度を上げてしまった場合でも同期音源君はドラムに合わせる事は絶対しません。
同期音源を使用するバンドを組もうとしている場合や、既に組んでいるバンドで同期を取り入れる場合、またはサポートドラムを頼む際は必ずクリックと合わせて叩けるかを確認しましょう。
結構できる人と出来ない人がいますし、人によっては同期に合わせて叩くのが嫌いなケースもあるはずです。
同期音源の流し方
同期音源には外に出てこないクリックが存在するわけですが、どうやって隠しているのかが問題です。
現象だけをまとめると下記のような図になります。
理想図
上記の構図になれば方法はなんでもいいと言えるのですが、アマチュアで手軽にできる範囲だとそんなに多くの方法はありません。
少なくとも普通の音源にクリックをかぶせただけでは無理なことは自明の理です。
ここからはいくつかの方法を記載します。
1. Pod等を使用した場合(モノラル方式)
必要なもの
・iPodなどの音楽プレイヤー(なんでも可)
・ドラムがクリックとオケを聴くためのイヤホン or ヘッドホン
・2分岐ケーブル
・ステレオケーブル (片側はLR分岐でフォンジャック、もう片方は分岐していないストレートのミニフォンジャック)
ステレオ2分岐ケーブル等、というのは下記のような物です。
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また、かなり基本的なケーブルなのでライブハウスにある可能性は高いのですが下記のケーブルも必要です。
リハーサルスタジオでも同期を流して練習すると思うのですが、その際には確実に必要なのでこの方式を採用する場合はご用意ください。
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ライブではドラムのすぐ近くにDIボックスという同期を送れるユニットがあるのでケーブルの長さが必要ないのですが、
リハーサルスタジオではドラムからPA卓まで結構距離がある事があるので念のため長めのものを買うことを推奨します。
この方式のメリット
最も簡素な方式なので費用が低いです。
現在スマホ等で誰もが携帯音楽プレイヤーを持っているため、その費用を考えないで良いのが大きいです。
あとはケーブル類だけ用意すればすぐ行えるので、初期費用1000円台から始められます。
敷居が低いのでこの方式を採用している人は結構見ます。
基本的にケーブルが死ぬ、音楽プレイヤーが壊れる、等のトラブル以外は影響がないので強いです。
(故障関連ではステレオ2分岐ケーブルの箇所が多分一番弱いので注意してください。)
この方式のデメリット
主に2点ありますが、まず客席に流れる同期音源がモノラル音源になります。
ステレオの片方をまるまるクリックに割いて、そっちをドラムだけに使用している力技なので当然そうなるのですが、とにかく同期音源のパート数が多いバンドにはあんまり向いてない気がします。
もう1点は、状況に応じて音量調整するといった事が出来ない点です。
まず音楽プレイヤーの1つのジャックから出てきた音を分岐している以上、ドラムが途中でボリュームを上げてしまった場合お客側に出ている音も上がってしまいます。
かつクリックとオケの音量をどっちかだけ変更なども出来ません。
クリックの音が大きすぎる場合等が一番困りそうですが、とにかくこの方式の場合は家で同期音源を書き出す段階で完全に仕上げないとまずいです。
さすがにライブ本番までには調整できる事なのですが、このデメリットは主に初回のリハーサル等で問題になる事があります。
2. MTRを使用した場合(ステレオ方式)
必要なもの
・ステレオアウトプットが2つあるMTR
・ドラムがクリックとオケを聴くためのイヤホン or ヘッドホン
・シールドケーブル2本 (PAに音源を送る用)
MTRは以前までかなり大型のでないと2つアウトプットのあるモデルは無かったのですが、最近は小型のでもあります。
僕が調べた範囲ですと、現段階ではこれが一番リーズナブルでかつ軽量でベストだと思います。↓
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僕はこれ買いました。
シールドについてですが、通常のギター用ので全然大丈夫なので99%スタジオにもライブハウスにもあります。
PAが受ける側だけキャノン端子だと尚良いのですが、それはスタジオにはあるか微妙なところです。
ライブハウスにはあります。
この方式のメリット
最も簡単にステレオで同期を流す方法です。
安定性と音質を両方兼ね揃え、かつその場での音量操作も可能です。
あとケーブル類が少なくて済むのも魅力です。
個人的にはこれがベストな方法だと思っています。
上記に貼ったZoom R8の設定方法については下記に記事を書きましたので参照ください。
この方法のデメリット
MTRが壊れた場合終了です。
これについては他の楽器全てに言えるので特筆する事でもないのですが、仮にドラムがプレイ中に誤ってMTRが置いてある台からMTRを落下させてしまった…等の場合は多分やばいです。
あとは音楽プレイヤーを使うよりも明らかにコストはかかります。
Zoom R8でも2万程度で、恐らくこれが最低限必要な額です。
そして今時MTRが必要な機会はほとんど無く、結構な率でライブ専用マシーンとなるはずです。
3. パソコンを使う場合(ステレオ方式) *非推奨
必要なもの
・パソコン
・ドラムがクリックとオケを聴くためのイヤホン or ヘッドホン
・ステレオアウトプットが2つあるインターフェース
・パソコンのケーブル類
・シールドケーブル2本
この方法のメリット
操作性、音、この2つでは一番優れていると思います。
もし家で使っているインターフェースがステレオアウトが2つある機種なら初期投資ゼロでの実現も可能でしょう。
そんな優れているパソコン使用形式を何故僕は非推奨なのか?
答えはデメリットにあります。
この方法のデメリット
不安定。
これに尽きます。
パソコンは一般的に熱と振動に弱いものですが、ライブハウスのステージにはこの2つがどちらとも日常空間では発生しないくらいのレベルで備わっており、普段の常識が通用しない場です。
その結果DAWのフリーズする可能性が飛躍的に上がります。
僕は1度、買ったばかりのノートパソコンで同期を流してライブをやったんですがもちろん途中で誤作動を起こし、曲中にオケだけ数秒止まって変なタイミングでオケ再開という最悪の事態になった事があります。
止まるならそのまま止まればいいのに謎のタイミングで再開したのでわけがわからない事になりました。
異常に気付いてすぐに僕はパソコンを止めた。
実際まわりでもフリーズ関係のトラブルはよく耳にしてました。
しかし当時買ったばかりの悪くないスペックのパソコンで、しかもリハーサルでは1度も不具合を起こさなかったにも関わらず本番で発作を起こすとは思いもしませんでした。
パソコンを使用する場合はステージ上で操作するのはやめて、長いケーブルを使用して楽屋か舞台袖から誰かのパソコン操作してもらうのが多分一番安定すると思います。
同期音源で大切な事
最も大切な事は、「ちゃんとオケとクリックが同じタイミングで安定して流れる事」です。
それが最低限必要な機能で、むしろそれだけ出来ていればなんでもいいわけです。
複雑なシステムを使用する程にトラブルが起こる可能性は高くなっていくので自身にとって簡単なものを選びましょう。
また、演奏中に何かトラブルが起こった場合は同期だけ止めてバンドだけで曲を進めていく覚悟をしておいたほうが良いと思います。
いったん演奏を止めてまた最初から……はいかにも美しくないので。
最後に
同期音源君はちゃんと動作していれば演奏を絶対にミスしない頼もしい仲間です。
しかしトラブルが起こった際、臨機応変な対応は絶対に出来ない空気の読めない奴でもあるのです。
同期を使うということは1つのリスクを背負うことでもあるのですが、それに見合うだけの効果と価値がある方式です。
その両方を意識しながら同期と上手に付き合っていきましょう。