ギブソンフライングVを改造しても激しい音にならない理由を考え、まとめました
目次 -Contents-
Vは良いぞ、見た目は。
ギブソンフライングVは、1958年に発売され、数量限定で製造されたもので、何年にもわたって多くのフォロワーと共に飛行してきました。
僕はギブソンのフライングVが好きだ。外見が。
激しい直線と柔らかい曲線が絶妙なバランスで、エレキギターの中では1番好きなデザインです。
テレキャスもなんですけどボディ形状とピックガードの形状のコントラストが良すぎると思います。
コントロール部分も美しい。
モダンでありつつビンテージの雰囲気を感じる外見。
しかし、サウンドについては独特でなかなか扱いにくいものになってます。
ギブソンフライングVの基本仕様
ボディ:マホガニー
ネック:マホガニー
指板:ローズウッド
フレット数:22フレット
ネック長さ 628.65mm(ミディアムスケール)
接着方式 セットネック
ピックアップ:H,H
コントロール:2ボリューム、1トーン、3ウェイセレクタースイッチ
ブリッジ:Tune Matic/Stop TailPeace
年代によってバリエーションがあって、80年代にはアルダーボディのフライングVもあったそうです。(正直その仕様のVが欲しい)
ネックシェイプはCタイプで、太くもなく細くもなく。普通です。
フライングVのサウンド傾向と課題
仕様がからおおよそお察しなのですが、中域がメインとなっていて基本的に丸い音が出ます。
外見からは激しい音が出そうに見えますが、実際のサウンドは全然激しくなくて、相当なギャップがあります。
このサウンド傾向についてはボディもネックもマホガニーでレスポールみたいにボディにトップ材を用いていない事が原因です。
マホガニーがこうゆうサウンド傾向である原因については後述します。
そしてこちらのほうが厄介なところなんですけど、パワーがあんまり無いです。
クランチで弾くぶんには問題ないのですがヘヴィな音を出そうと思うと結構な問題。
これはピックアップのパワーが低いからなのでは?ピックアップ交換で解決できるのでは…?
というわけでピックアップを交換されてるフライングVを入手しました。
フライングV on ビルローレンス
ブリッジ側をビルローレンスのピックアップ、L500にしてるものです。
L500といえばパンテラでダイムバッグ・ダレルが使ってたやつですね。
あの極端なサウンドから想像出来ると思いますがメタル用って事だ。
ハイパワーと言う意味では文句なしのはずですけど……いやー、どうなのこれ??
弾いてみて録ってみた
というわけで新品のダダリオ弦を張って、実際の音を録音しました。
ライン録音したものをKemperでFortinのMeshuggah、FenderのBassmanの2種類でリアンプしてます。
真ん中らへんからの単音弾きではブースターとしてFortinにはチューブスクリーマー、Bassmanにはトレブルブースターを使用してます。
フライングV Fortin
フライングV Bassman
James Tylerでも録ってみた
比較対象として似たようなフレーズで別のギターで録った音源も用意しました。
別のギターというのは僕のメイン機のJames Tyler clasiccです。なお、弦は2ヶ月ほど張り替えてません。
フライングVの時とアンプの設定は何も変えてません。ゲインもEQも同じです。
タイラー Fortin
タイラー bassman
簡単に弾いて録っただけなのでクオリティはアレなんですけど、何というか帯域のレンジが全然違いますね。
ピックアップ自体はビルローレンス搭載のVの方がメタル向きのはずなんですけど何かやっぱりもわっとしてて、タイラーのほうがモダンな音してますしサスティンもある。
フライングVはどうして激しいサウンドにならないのか?
ピックアップがここまでパワフルでもそんなに良い影響に繋がらない原因がよくわからなかったので、数ヶ月ほどエレキギターそのものについて色々と考えたり調べたり弾いたりしてみました。
Vのサウンド傾向が丸くて弱い原因は上でも述べたようにトップ材無しで指板以外マホガニー材のみで構成されている点です。
マホガニーがなぜ丸いサウンドになるのかと言うと、まぁ主に軽いからだと思います。
マホガニーのギター持ってる人はわかると思いますが柔らかくてぶつけるとすぐにヘコミます。密度が低いのでしょうか。
フライングVは特殊な形状なのでストラトより大きいんですけど、ストラトが3~4キロ程に対してフライングVは2キロ台で、「大きいくせに軽い」というものになってます。
軽いと言う事は振動の影響を受けやすく、つまり弦の振動がボディとネックに伝達、共鳴しやすいわけです。
そしてVはその独特の形状が故に共鳴に対するロス、損失が多いっぽい。
この共鳴しやすい材特性と共鳴を活かしきれない形状が相まってパワー不足を招いているのでは、と思います。
詳しくは下記で説明します。
ギターが弦に共鳴することによる影響
ボディが鳴るギターは良い、という考えは未だにありますがこれは一概には言えず、電装を含む全てのパーツの意図とのバランスによると思います。
極端な話ですが最も鳴るギター、それはアコースティックギターです。
鳴るギターこそが良いギターなのだとすればアコギにピックアップを載せるのがベストなはず。
いわゆる箱モノであるホロウボディ構造が主流とはなっていない事が良い証拠ですが、鳴る=良い、では無いのです。
ボディが鳴るためにはその力をどこかから得ているのですが、これはギターの場合だと奏者のピッキングであり、弦の振動を伝わってボディが共鳴します。
その共鳴の仕方は材質や形状によって異なりますが、ボディが鳴る事で倍音が発生し、金属の弦を弾いただけでは得られないサウンドを生み出します。
しかし共鳴するということは弦の振動の力を奪っている、という事です。
振動する力を奪われた弦は長い時間振動する事が出来ないため、必然的にサスティンは悪くなります。
しかし木製の本体が共鳴することでマイルドな音が付加され、より楽器的な音になります。
これがギターが弦に共鳴、いわゆる鳴ることによる影響です。理屈的には。
V形状の問題点
鳴る事でギターはギターらしいサウンドを生み出しますが、Vはこの共鳴の仕方が特殊です。
フライングVの形状の中で特筆すべきはネックポケット部分と、その名前の由来にもなっているV字に開いたボディの羽です。
鳴るという事は振動していると言う事で、振動していると言う事は極端に言って「しなっている」という事です。
ネックの共鳴については物理的に見て、ネックは軽い方が共鳴しやすく、ネックポケットがボディかとの干渉が少ないほうが共鳴しやすく、また、ヘッドも軽いほうが共鳴します。。
Vは重量が軽く、ネックポケット周辺にボディが通常より省かれているためネックがかなり共鳴しており、試しに演奏中にヘッドを触るとかなり震えてます。
この仕様はVの特徴である中域を中心とした丸い音にかなり影響していると思います。
また、ボディのVシェイプについてですがこの羽の先部分が必要以上に共鳴していて損失が多いのでは?と思います。
ボディが鳴る事は悪くないのですが、エレキギターはその鳴った音を弦かピックアップに拾わせる必要があります。
そうゆう意味で、こんな遠い場所で共鳴されてもあまり拾えない、もしくは拾ってないのでは…?と。
同じくほぼマホガニー構成であるはずのレスポールジュニアやSGと比較してもVの音が弱いのは上記の理由であると考えられます。
結論(僕の中での)
ギブソンフライングVは弦の振動を色んなところに持っていかれてるので、ピックアップがどんなに高出力であってもパワフルにはならないのだと思います。
つまりすでにある個体においてこの方向性を何とか激しい方向に変えるというのは非常に困難という事です。
クランチまででしか弾かないのを前提としたサウンド設計なのだな…と思いました。
材の構成が違えば激しいサウンドにもなる…はず
この問題ついては「大きくて軽い」と「必要以上に鳴る構成」の2つが同時に存在しなければ発生しないと思います。
メタルで使用されてるトゲトゲのVのはネックをメイプル材にしたりといった対策でタイトな音を実現してます。
なので無難に材構成を変える事が良いのでは、と思います。
構成についてはストラトのようにアルダーボディ、メイプルネックにするのはわりと良さそうに思えますが冒頭に書いたように80年代に一度やってるらしいんですよね。
現在残ってないという事はダメだったのだろうか。
いっそ全部メイプルにするとかやっても良い気はします。4~5キロになる。
その他、色々とアイディアは浮かぶのですが例として下記のようなのが考えられます。
・レスポールより高い割合でメイプルをトップに貼る
・ネックを合材にして強度アップ(ボディが激軽いのでネックを重くするとヘッド落ちする)
・ボディ羽の部分だけでも材質を変える
色々と思いつきます。こうゆうの考えると結構楽しい。
現在ギブソン型フライングVは材の選択肢があんまり無い…
トゲトゲのVのはジャクソンとかにいくらでもあるんですけどギブソン型のはあんまり無いです。
そして仕様がどれも同じなんですよね。
近年の破産直前のマーケティングが迷走してた頃、本家ギブソンが出した「モダンな仕様のフライングVがだぜ!」というやつもなんですけど、外見はそれっぽいんですけどサウンドはモダンじゃないという。
しかし材構成を変えただけのVのとか外見上変化が無くて、あともはや伝統とも言えるものを変えて発売となると……多分売れないと判断されるだろうな~…と思うので難しいのかもしれません。現状のギブソンVにもあんまり人気あるイメージ無いですが。
デフォルトのVのはかなり使いにくい音ですが「これはそうゆうもんなんだ!」と言う考えです。
あー、こうゆうのお酒飲みながら誰かと話したいです。